寿司対決

Photo.1

かつて一世を風靡した料理番組「料理の鉄人」を企画、
また映画「おくりびと」の脚本で第81回アカデミー賞 外国語映画賞を受賞、ゆるキャラ「くまもん」の生みの親でもあり
放送作家、脚本家、ラジオパーソナリティーと、多方面で活躍され
今、最乗りにのっているマルチクリエーター、小山 薫堂 さん。

雑誌「GHETE」(幻冬舎刊)、
danchu などメディアなどにもたびたび登場し、

氏の「食」に対する視点・造詣の深さは
「料理の鉄人」を企画しましたことでも
おわかりのように、類稀なる才賦をお持ちでいらっしゃいます。(Photo.1)
その小山氏からのお誘いを受け、
小山氏が日本中のお寿司屋さんを食べ歩き
その中で、氏がこれはと思われるほど深い感銘を受けました
全国各地から3軒のご主人に東京にご参集いただき、
わざわざ食べ歩かずとも、一度に食べ比べてしまおうという、

なんとも贅沢極まる企画に参加してまいりました。

寿司対決

Photo.2

会場となりましたのは、ROPPONGI HILLS タワー51階にあります会員制レストラン、
ROPPONGI HILLS CLUBの バンケットルーム。
ゲストが職人さんを取り囲むように席が並べられ、
さながら「キッチンスタジアム」^^(Photo.2)

会場はあたかも自分がアイアンシェフの審査員にでもなったかのような
錯覚に陥りそうになるほど、一流の職人が放つ、
凛とした緊迫した空気が漂い、この上ない臨場感に包まれました。

この日、ゲストシェフとして腕を奮われたのは

札幌 田なべ

岡山 ひさ田

熊本 奴寿司

のお三方。
いづれも、当の地元でも中々予約が取れないほどの名店ばかりであります。

寿司対決

Photo.3

「田なべ」の渡邉さんは15歳から鮨の板前として修行を始められ、
ザ・ウィンザーホテル洞爺「わく善」の店主として立ち上げに参加。
その後38歳ですすきのの地にて「鮨 田なべ」を創業され、
ミシュランガイド2012 HOKKAIDO で三ツ星を獲得された、気鋭の職人。(Photo.3)

岡山の「ひさ田」のご主人、久田さんはマグロ以外は
瀬戸内の地物の鮮度の高い魚介を「地産地消」で供することに強い拘りを持ち、
休みのたびに全国の名店を食べ歩き、
自分の握りたい寿司を研究されたという苦労人。
岡山郊外の最寄駅から車で20分もかかる僻地に店を構えるも
ここの寿司を目当てにはるばる大阪、神戸から新幹線を利用してまで
通い詰めるお客さんが引きも切りません。

奴寿司のご主人は小山さんのご出身地、
熊本・天草でお店を営まれています。
非常に物腰の柔らかい方で、
そのご性格が握られるお寿司にも滲み出ていました。

「食べ比べ」と題してはおりますが、
それぞれのご主人の「鮨」に対する思いを単純に比較するのは正直難しいなー、
というのが正直な感想でした。

甲乙付け難し。私的には全て「アリ」でした^^

私は「寿司」という食べ物ほど、奥の深いものはないと思っております。

肴の鮮度・質はもちろんのこと、酢や昆布で〆ることで水分を抜き、
一手間加えることで旨味を際立たせたり、
寿司飯ひとつに焦点を充ててみても、
使用するお米の品種・炊き方、酢の調合、シャリの大きさなどはもとより、
職人さんが育ってきた環境によって、その味は大きく変わってきます。

一貫の鮨が出来るまでには、それこそ膨大な手間暇がかかります。

そして食べるのは一瞬。

職人さんの数だけ、そしてお店の数だけ、
その仕込みは微妙に変わってきます。

今回、垂直に食べ比べることで
よりそのことを強く感じたのであります。

私にはお鮨という食べ物、
そして贔屓にする鮨屋の明確な基準というものがあります。

  • お鮨は、ネタとシャリのバランスが総てである。
    サービスとばかりにデカネタが一部の間ではもてはやされておりますが、
    一貫食した後にネタだけが口に残っていたり、逆にシャリが残っているのは
    よろしくありません。
    あくまで私感ですが寿司は小ぶりなほうが私は好きです。
    ひと口で食べきれないほど大きい寿司は、口に運んだ時の
    ネタとシャリのハーモニーのバランスが取れません。
  • ある程度客の好みを聞いてくれる
    私はお酒を飲みますのでひとまずつまみ(アテ)を幾品か、
    それから握りに移行する、というのがいつものパターン。
    あまりにも主人の意向が強く
    「うちは飲む店じゃあない。(握りを)つまむ店だ」と言われたために
    何も食さずに店を後にしたことは一度や二度ではききません。
    これはもう、お店と私との「相性」の問題なのです。
  • 鮮度が高い魚介を使うのは勿論ですが、
    新鮮であれば良いわけでは決してありません。
    鯛や鮃などの白身、マグロなどの赤身はネタを寝かせることで旨味が増します。
  • 鮨をつまむには、やはりカウンターで食すのが必須です。
    そして出されたら間髪入れずに食す。
    鮨は鮮度が命。時間の経過とともに、急激に食味は低下します。
  • 握る職人の技量はもとよりそれを快適に食する環境もまた、
    それ以上に大切であります。
    あまりにも客席間のスペースが窮屈なのはいただけません。
    また今時カウンターでの喫煙など論外であり、
    そのお店に通う客層もまた、大切な要素であります。
    「俄か自称寿司痛(通)」が多い店は、いただけません。

 

そして最後に、やはりご主人の人間性がものを言います。
「美味しいものを、お腹一杯食べてもらいたい」精神が
ひしひしと伝わるようなご主人のいるお店においては、
ハズレはない、というのが持論であります。

何だかんだ言っても、寿司屋と客は「人と人」。
人と人が交われば、「相性」というものが必ず生まれます。

「相性」の合わない鮨屋で過ごす時間ほどつまらないものはありません。

これはまさに、「Dr.と患者さんとの関係」にも相通ずるものが
あるような気がしてなりません。
正直申し上げますと「一本の歯の有難味を十分理解していただけている、
歯科治療、口腔メンテナンスを何にも増して、優先していただける方」には、
それこそ採算を度外視してでもしっかり治してあげようという気持ちになります。

そうでない方は、言わずもがな^^

私には医院の規模を大きくしようとか、敷居を下げてでも何とかして売り上げを伸ばそう、
といった野心がありません。

ですから自らの身を犠牲にしてまで、
自分勝手な人に奉仕しようとする考えは全くありません。

この趣旨にご賛同いただける方のみ、おいでいただければ結構であります。

俗にいう、「職人魂」でありましょうか。

話がそれましたが、このような素晴らしい食事会を例に挙げられます通り、
超一流のクリエーターが持つ、
類稀な創造力・企画力・着眼点に触れますことは
生来イベントに参加するのも、企てるのも大好きな私にとりまして
大いなる刺激・参考になります。

「イベント」や「パーティー」を企画する最大の目的は
「たくさんの人に喜んでもらう」ことに尽きます。

そのために招待したゲストがアッと驚くサプライズを仕掛けたり、
美味しい食事を提供したり、上質な時間を共に過ごす。

ゲストの方々の楽しそうな笑顔を想像しながら。
そしてそのホスピタリティを臨床(歯科医療)にフィードバックしていく。
わかる人にわかってもらえるように。

それでいいんです^^