空也餅大切なお客さまをおもてなししたり、先様にお伺いする際に
皆さまはどのような「手土産」または「お持たせ」をお選びになるでしょうか。

大抵の方は、無難なところでケーキなどのスウィーツ
ないしは和菓子をお選びになるでしょう。

私は専ら、「お持たせ」には、銀座「空也」の最中をお奨めしております。(店舗情報

明治17年(1884年)に上野池之端に創業、
昭和24年(1949年)に現在の銀座6丁目に移転し今もなお
創業以来変わらぬ丁寧な和菓子作りに
文豪 夏目漱石も自著
「吾輩は猫である」の文中に
「主人はまたやられたと思いながら
何も云わずに空也餅(くうやもち)を頬張(ほおば)って口をもごもご云わしている。
<略>
「こりゃ面白い」と迷亭も空也餅を頬張る。
<略>
「みんな去年の暮は暗合(あんごう)で妙ですな」と寒月が笑う。
欠けた前歯のうちに空也餅(くうやもち)が着いている。」
と登場させるほど、空也の和菓子を愛していた一人に挙げられます。

それ以外にもお店の暖簾や、和菓子に刻印される「空也」の文字は
梅原龍三郎の書を元にしたものであったり、
ご進物用の掛け紙は永井素岳の書であるなど、
甘党の文人に、こよなく愛されていたのが垣間見えます。

このお店の何が興味深いのかといいますと、

「菓子は売れども貸し売りはせず」
という先代からの方針を頑ななまでに踏襲している点。
どういうことかといいますと
「支店を設けず、営業時間も5時(4時)まで、日祝は休み
配達や配送は一切行わず
来店客に品物を受け渡す」こと。
配達は人手がないので行わない。
配送は最中が壊れるので、これまた行わない。
そして菓子の種類を極力少なくし最中一筋を基本とする。

「支店を出して量産をしようとすると機械に頼らざるを得ず、
それでは空也最中の味が変わる。
人手で作るからこそ小豆の皮と実の間の旨味と
ザラザラした感じも残るのである」(「東京老舗の履歴書」より)

というわけでこの最中、シャネルやカルティエ、ルイ・ヴィトンなどの
ブランドショップが立ち並ぶ「銀座並木通り」のど真ん中に
旧き良き銀座の名店を偲ばせる佇まいを見せております。

というわけでデパートなどからも
「是非うちに」と引く手あまた。
でも購入できるのはここ銀座のお店だけ。
しかも予め電話で予約しておかないと購入することすら出来ないのに
その電話が中々繋がりません。

これだけ情報通信・輸送手段が発達している世の中にあって
入手するだけでも作り手以上に、非常に手間のかかる「最中」なのです。

そのような非常に貴重なものだからこそ
送られた、供された側の方は知る人からすれば
「この方はわざわざ自分のために、銀座まで出向き
お買い求めになられた」ということがわかるのです。

最中一つに、その方を大切に想う気持ちがこれほどまでに詰まった
「お持たせ」があるででょうか。

今でも「宵越しの菓子は売らない」心意気で
親子が暮らして行ければそれで良し、と
4人の職人さんとご家族で商っているそうです。

ちなみに
「空也」では、主人は初代から菓子作りはしません。
その原材料の品質管理に厳しく目を光らせ、あれこれ手を加えず
良い品を安く売ることをモットーとしております。

いまも空也は名誉や「企業欲」とは無縁のようです。
現代社会において、このような潔さを「粋」と言わずして何といいましょうや。

私もかねてからHP上で申しておりますが、
12年前に東久留米で開業しました当初より
金融機関や各方面より、「規模を拡大してはどうか」というご提案を
幾度となく頂戴することがありました。
マーケティング戦略上におきましても、
患者さんが歯科医院を選択する上で
「規模の大きさ」は非常に重要視される傾向にあり、
中々にして無視できない状況ではありますが

キンデンタルクリニックもまた、
「クオリティを下げてまで、規模を拡大しよう」とは、露ほどにも思いません。
規模を拡大しますと、今まで頑なに守ってきた私の「イズム」は確実に薄まります。

過去にも無理に事業を拡大した結果
身動きが取れなくなった経営者を幾度となく見てきました。

歯科医療もまた、全てにおいて「手作業」ですから、
量産化、機械化出来ません。
基本に忠実な、常に品質管理に厳しい目を配り、皆さまに喜んでいただける
プロダクト(歯科医療提供)に尽力していく。

この精神は最中のように変えません^^

私がこのブログを通じてお伝えしたいのは
あくまでも私の人間性と、趣味人としての生き方、考え方を
皆さまにご理解いただきたいから。
(ただ単に私がこういう物書きが好きなだけ、という面もありますが)
またブログなどの文章構成能力で、
歯科医師としての品格を窺い知ることが出来るかと。

皆さまにおかれましても、集患目的の過剰な謳い文句や
派手な宣伝には、過度に感化されませんことを願うばかりです。

本物は決して流されません。

本物は、過剰な宣伝をしません。

私も一刻も早くそうなれますよう、もう少し宣伝させてください^^