究極の涼を求めて京都市を縦に流れる鴨川
その源流で

もの思へば沢の蛍もわが身よりあくがれ出づる魂かとぞ見る
木船川 山もと影の夕ぐれに 玉ちる波は 蛍なりけり

と、和泉式部にも詠まれた貴船川

古くから京の奥座敷として、知られた名所であります。
川のせせらぎの直上に櫓を組み、そちらで食す川床料理は
暑い京都を涼しく過す夏の風物詩として
京都旅行のパンフレットなどでその風景をご覧になった方も多いかと思います。

そこに行ってまいりました。

市内からですと、結構な距離のためタクシーで向かおうとしましたが

「電車で行きなはれ」

何故か、乗車拒否されてしまう始末。

なので疑問の晴れぬまま電車で向かいました。
叡山電鉄 略して「叡電」。
気分は箱根登山鉄道。(Photo.1)

何とものどかな出で立ちですが、車内はさながら通勤電車並みの混雑ぶり。
揺られること30分で「貴船口」に到着です。物凄い人人人。
(Photo.2)

駅を降りて目的の「右源太」さんまでは送迎のバスが来てくださいましたが
予定時間よりも早く着いてしまい、また折角ですので歩いていくことにしました。

何とも風光明媚な川並みです。(Photo.3)

川上より小滝が連なり、マイナスイオン浴びまくりです。
しばらく歩きますと、料理屋さんが軒を連ねるのが見えてきました。

そこかしこに川床が設けてあるのが垣間見え、
初めて見た、いかにも情緒たっぷりな光景に
期待は否が応にも高まってまいります。(Photo.4)

よく見ますと、道幅が極端に狭いです。
また頻繁に歩行者も通るため
行き交う車も一台がすれ違うだけで非常に時間がかかるため、
全くといってよいほど車列が動きません。
歩いているほうが断然早いです。
これが乗車拒否の理由だったのですね。納得です。

究極の涼を求めてそんなこんなで一時間も歩きますと目的地、「右源太」さんに到着です。
予約した時間と名前を告げ程なく案内されますと、おおっ、何とも涼しい!!
噂には聞いておりましたが、上の道路上と比べても、
明らかに10℃ぐらい涼しい。
写真
水面には川魚が優雅に泳いでおります。
(Photo.5)

いやはや、何という光景でありましょうか。(Photo.6)

簾から差し込むお日様さえも涼やかにさえ感じます。

東京ですとこういった観光地の食事など、期待する由もありませんが
そこは天下の京の奥座敷。しっかりしてはります。^^

特筆すべきは「お椀」。(Photo.7)
日本料理店はお椀の出来の良し悪しで、
そのお店の「レベル」がわかるといわれております。
素材そのものが良いため、過度な調理をせず
食材の持ち味を最大限活かすのが京料理の真髄。
またお盆は先祖を送る時期でもあるため
普段よりもやや控えめな器で供するのも、このj時期の特徴といえます。

で、肝心の中身は今が旬の鱧。鱧椀です。骨切りしてある鱧の身が
まるでお椀の中で花が咲いたような美しさ。
鱧の身は骨が多く、その骨切りこそが料理人の腕の見せ所。
(Photo.8)
刃入れが甘いと食感にモロに影響しますし
刃を入れすぎますと繊細な鱧の身が切れてしまいます。

写真は右源太さんの板前さんではなく、
東京・荒木町の「うえ村」さんのご主人です。
鱧の骨切りを真近で見ることの出来た貴重な一コマです。
良く手入れしてある骨きり包丁の奏でる「ジョリッ、ジョリッ」という、
テンポの良い音がまた、食欲をそそります。

お椀の中の「鱧の身」は「湯引き」といい(京都では「落とし」といいます)、
さっと湯通ししてありますので
外側はふっくら、なかは半生の「レア」な状態で
何とも言えないふくよかな食感を生み出します。

あまりにも優雅な時間のため
食事が終わってしばらく経っても、誰一人帰ろうとしません。^^
あまり長居し過ぎても、お店のご迷惑になりますので
後ろ髪引かれる思いで、貴船を後にしました。

夜、先斗町の「だいとも」の女将さんにそのお話をしたところ、
http://hwsa5.gyao.ne.jp/daitomo/
「貴船は、秋にすき焼きを食べに行くのがホンマの通」だそうで。
成る程。想像しただけで「大人の修学旅行」みたいな。
知れば知る程奥が深い。
行ってきたばかりなのに、また行きたくなる。
それが私が京都にハマる理由です。

皆さまもいかがですか?